私がトランスヘイトをやめた理由

SNS上で一時期トランスヘイトに加担してしまったけれど、今は考えをあらためた「ぴのさん」にお話をうかがいました。

*性暴力やトランスジェンダーへの差別に関する内容を含みます。閲覧してしんどくなる方もおられるかもしれませんのでご留意ください。

編集部:ぴのさん、今日はよろしくお願いします。はじめに自己紹介をお願いしてもいいですか。

ぴのさん:よろしくお願いします。ぴのと言います。年齢は30代、シスジェンダーの女性で、異性愛者です。好きな食べ物は果物で、特にいちごとミカンが好きです。

編集部:ぴのさんがトランスジェンダーについて話題を追うようになった頃のことを教えてください。

ぴのさん:Twitterでかなり見るようになったのは、この1年ぐらいですね。以前はTwitterでは趣味専用のアカウントを持っていて、ただ友達と仲良くしたりするだけでした。それがコロナ禍になって外出機会が減り、SNSを使う時間が長くなってから、社会問題について話題を追うようになりました。自分が投稿する内容も変わりましたね。人に会えなくて寂しかったのもあります。今でこそトランス差別的なアカウントはあんまりフォローしてないですけど、かつては結構タイムラインにあがってきてました。トランスフォビックな投稿やリツイートがタイムラインに日々あがってくる感じ。考えが偏ってたって、今ならわかるんですけど・・。

編集部:特に記憶に残っているツイートはありますか。

ぴのさん:「トランスジェンダーは手術しても女性に対する加害欲求があるんだ」って投稿ですね。すごく怖かったです。今なら、性暴力はそれを行う個人が悪いんだって思っています。属性で「この人たちは〜」とひもづけるのが差別だとわかるけど・・・。私は性暴力被害経験もあるので、そのような投稿を見ると本当にぞっとしました。しかも、少なくないリツイート数で流れてきたんですよ。

編集部:そのツイートをみて、どう思いましたか。

ぴの:ぞっとしたんですけど、同時にためらいもありました。本当なのかわからなかったからです。でも、他の投稿については、自分がリツイートしたりコメントしていた時期もありました。今では反省しています。だからこそ、自分に何かできることはないかなって思ってこのインタビューを受けました。

編集部:トランスジェンダーについてそれまで知識を持っていましたか。たとえばカミングアウトしている知り合いがいたとか、そういう経験はありましたか。

ぴの:トランス女性については全然ですね。椿彩奈さん、YouTuberの青木歌音さんのことは知っていました。青木さんの動画は楽しくて良いなって思っていました。トランス男性については、ひとりだけ知り合いがいました。たまたま共通の趣味があって交流がありました。

編集部:トランスジェンダーに関する話題を追いかける中で、ご自身の考えが変わったのはなぜでしょうか。

ぴの:決定的だったのは韓国の元軍人だったトランス女性のピョン・ヒスさんが遺体で発見されたことです。そのニュースをみて、差別がこうやって人の命を奪うんだとわかって・・あの、言葉にならないです。悲しくて、やりきれなくて・・。

その少し前から「あれ?」って思っていたんです。たとえば性被害にランクをつけるような書き込みがありました。「トランス女性は妊娠することがないから、レイプされても女の気持ちがわからない」とか・・・。私も性被害にあって妊娠しなかったですけど、それでもすごくつらかったです。性被害はひとしく性被害です。トランス、シスを問わず性被害者はいます。

ぴの:当事者だったらどれだけの思いなのかと思いますね。シスジェンダーは、トランスジェンダーに対してマジョリティなんだとわかっていきました。あと、私の場合には、先ほど話したトランス男性の知り合いがいたことも大きかったと思います。彼は経済的な理由から治療も思い通りに進められない状態でした。トイレは人目が気になって、多目的トイレを使っていることが多くて、いろいろしんどい思いをしていました。インターネット上で語られる「女だと言えば女湯に入れるべきだと主張するトランスジェンダー像」は、友人とはかけ離れたものでした。友人がいたからこそ引き返せたのだと思います。

編集部:トランスヘイトの書き込みをリツイートしていたときの自分をふりかえり、どう思いますか。

ぴの:RLE(Real Life Experience)のことを調べてほしいですね。移行先の性別で暮らせるかどうかを確かめてから次の治療に進むことが、ガイドライン上でも求められていて、生活実態がなければ手術までいけないのに、そのことを自分は知りませんでした。性別適合手術は、ホルモン治療もして移行先での生活ができて、最後のしあげ。そのことを知らなくてちょっと恥ずかしいです。

編集部:さいごに、一言お願いします。

ぴのさん:反省したこともあって、アライとしてできることは何かなと今では考えています。両親に「自分の友人にトランスジェンダー がいる」と話したら驚いていました。身近にいることを知らない人はまだまだ多いですね。トランスジェンダー はあなたのそばで生きてて、すでにすれちがってるかもしれない人たちのことだと、今なら言えます。すでに社会の中で暮らしてるから、悪魔化するのやめようよっていいたいです。

編集部:ぴのさん、お話をきかせてくださりありがとうございました!

Trans101.jpでは今後もトランスヘイトへの加担をやめた方のインタビューを続けていきたいと考えています。関心のある方はコンタクトフォームからご連絡ください。

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