トランスジェンダーについて語るときに登場する用語について整理します。
基本的な用語
・トランスジェンダー :出生時にわりあてられた性別とは、異なる性自認(ジェンダー・アイデンティティ)を持つ人のこと。対義語はシスジェンダー
・シスジェンダー :トランスジェンダーではない人のこと。出生時にわりあてられた性別の「〜らしく」に違和感を持つ場合でも、社会的あるいは法的にその性別集団に所属することを望む場合にはシスジェンダーに含まれる。
・トランス男性:出生時にわりあてられた性別が女性で、男性の性自認をもつ人
・トランス女性:出生時にわりあてられた性別が男性で、女性の性自認をもつ人
・ノンバイナリー または Xジェンダー:男女いずれの一方に限定されない性自認をもつ人
・性自認:自分はどのような性別である/ないという連続した自己認識のありよう
・性的指向:どのような性別の相手に恋愛感情や性的関心を抱くのかを示したもの。性自認と混同されがちだが、性自認と性的指向はそれぞれが独立した別の事柄
*トランスジェンダーの性的指向もさまざまなので、たとえばトランス男性の中にも女性が好きな人、男性が好きな人、男女ともに恋愛対象になる人などがいて多様性がある。
・性別移行:社会的なもの(名前、まわりからの扱われ方、服装など)と医療が介入するもの(ホルモン療法、性別適合手術など)が組み合わさる。当事者によって、なにをどこまで希望するのか、なにが実現可能なのかは異なる。医学的な性別移行は、基本的には、健康保険適用外であり、身体への負担だけでなく金銭的負担も大きい
・性別適合手術:外性器の再形成や性線切除などに関する手術。以前は性転換手術と称したが、現在はこのように呼ぶことが多い。SRSと略されることもある。性別適合手術は外見には影響せず、外見に主に影響するのはホルモン療法である。
・ホルモン療法:男性化・女性化をうながすホルモン剤を定期的に投与することで外見などを変える治療法。男性化にはテストステロン、女性化にはエストロゲンが主に使われる。
・性同一性障害:ホルモン治療、性別適合手術などの治療を希望するトランスジェンダーは専門の精神科(ジェンダー・クリニック)で性同一性障害の診断を受けることがガイドライン上求められる。ガイドラインに沿わず、自分で病院を探して治療する方法を自由診療という。性同一性障害を略してGIDとも呼ぶ。
・性同一性障害特例法:戸籍の性別変更の要件をさだめる法律。性別適合手術を受けること、婚姻していないこと、未成年の子がいないことなど一定要件のもとに戸籍の性別変更が可能となるが、要件が厳しいために戸籍の性別変更ができない当事者も多い
・LGBT:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー の頭文字を並べた用語で性的少数者をまとめてさすときに使われることが多い。LGBは性的指向に関する用語である。
・カミングアウト:自身が性的少数者であることを、自分の意思で開示すること
・アウティング:ある人が性的少数者であることを、本人の同意なく他者が暴露すること
その他の用語
・パス:トランスジェンダーの人の外見について使われる用語。トランス女性がシスジェンダーの女性のように見えたり、トランス男性がシスジェンダーの男性のように見えたりするとき「パスしている」などと使う。パスはトランスジェンダーの当事者にとって日常生活を安全に行う上で重要な問題だが、ある人の「パス度」について第三者が揶揄することは控えた方がよい。
・TERF(ターフ):トランスジェンダー排除的フェミニスト(Trans Exclusionary Radical Feminist)の略。通常フェミニズムはトランスジェンダーを排除するものではないが、一部に女性の安全や権利を守るためにトランスジェンダーを排除すべきと考える人がおり、このように呼ばれる。実際にTERFと呼ばれている人たちの中にはアンチフェミニズムでトランス差別的な男性なども多く含まれており、しばしば混乱を招くことから当サイトではTERFという用語は積極的には用いていない。
・TRA:トランスジェンダーの活動家を揶揄する用語。アンチフェミニズムの男性運動家を指すMRA(Men’s Rights Activist)とかけた造語であり、トランスジェンダーの権利擁護がアンチフェミニズム的であるとの意味を含む。実際にはトランスジェンダーの権利擁護を訴える人の中にフェミニストは多い。
・ミスジェンダリング:ある人をまちがった性別で扱うこと。たとえば女性である人に「お兄さん」と声をかけたり、男性である人を「彼女」と呼んでしまう場面などを指す。