2004年施行された性同一性障害特例法は、一定の要件を満たしたものに対して戸籍の性別変更を認めるという法律です。この法律に基づき戸籍上の性別を変更した人は、司法統計によれば19年までの15年間で計9625人にわたります。
一方、日本精神神経学会の研究グループによれば15年末までに性同一性障害の診断を受けた人は延べ2万2435人にのぼるそうです。つまり、性同一性障害の診断をもつトランスジェンダーの半数以上が戸籍の性別変更に至ってない現状があります。その要因としては、診断を持っていても、性同一性障害特例法の要件を満たしていない当事者が多いことが想定されます。
性同一性障害特例法の要件とは・・
一 二十歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
(上記に加えて二名の医師により性同一性障害の診断がなされている必要があります)
たとえば、トランス男性の鈴木げんさんは、男性として生活していますが生殖腺の摘出をしていないために、戸籍上は女性のままです。

「いま僕の戸籍の性別が男になっても困る人は誰もいません。でも、卵巣摘出をしていないため僕の戸籍は女性です。戸籍の性別だけが女であることで、むしろ周りが混乱する状態です」(げんさん)
また、そもそもトランスジェンダーの当事者の全員が、性同一性障害の診断を持っているわけではありません。埼玉県の調査を参照すればトランスジェンダーの人口は0.5%、バイナリーであるトランスジェンダー(男女いずれかの性を自認している人/トランス男性またはトランス女性)は人口の0.05%でした。仮に日本全体にトランス男性とトランス女性があわせて0.05%いるとすれば、日本にはトランス男性/トランス女性あわせて約6万人程度いる計算になります。
トランスジェンダーの人口について正確な数字をはっきり出せないので、あくまで試算となりますが、戸籍の性別変更ができているのはトランス男性およびトランス女性の6分の1程度である可能性があります。みなさんはこの割合は多いと感じますか。少ないと感じますか。