性別移行してから後悔する人がたくさんいるのか

ファクトチェック一覧はこちらからご覧いただけます。

*トランスジェンダーへの差別に関する内容を含みます。閲覧してしんどくなる方もおられるかもしれませんのでご留意ください。

❸性別移行してから後悔する人がたくさんいるのか

だれもが知る『ハリー・ポッター』作者のJ.K.ローリングさんが、2020年に自分のウェブサイトにこんな投稿をして話題になりました。「性別移行をのぞむ少女が急増していて、性別移行を後悔して以前の性別にもう一度戻る(detransition)人も増えている」。本当にそうだとしたら、たしかにローリングさんの心配もわからなくないのですが…….統計を調べてみました。

英国のNHS(公的保健医療制度)の報告書によれば、NHSを使って性別移行をした3,398人に調査したところ、性別移行を後悔していたのは0.47%でした。後悔していた16人のうち10人は以前の性別に戻っている状態を一時的なものだと答えました。この報告書では性別移行した後に元に戻る理由の多くは、性自認の変化というよりは社会的な困難によるもので、ほとんどは一時的なものであるとしています。

そもそもイギリスにおけるトランスジェンダーへの医療資源はたいへん乏しく、26%のトランスジェンダーが最初のカウンセリングの予約をいれるのに2年以上待っているという調査もあるほど。「多感な少女がつぎつぎに性別移行させられて・・」というローリングさんの想定からは程遠い状況といえるでしょう。

結論としては「性別再移行する人はきわめて稀で、後悔する理由の大半は社会的な困難に起因するもの」ということでした。

(ちなみに日本でもジェンダークリニックがある地域は限定されていて、夜行バスや飛行機で受診している当事者が少なくない状況があります。医療資源をなんとか増やして欲しいというのは当事者たちの長年の悲願です)。

性別移行をのぞむ少女は急増しているのか?

なお、JKローリングさんの前半の主張「性別移行をのぞむ少女が急増していて」についても検証してみましょう。ローリングさんは「10年前には性別移行を望む人たちの大半は、出生時に男性だった人たちだったのに、今では少女たちが以前よりも4400%も増加している」と主張しています。

この主張はどうやら女性から男性に性別移行した人が2009年〜2010年には40人だったのに対し、2017年〜2018年には1,806人だったことに由来しているようです。専門医は「これはトランスジェンダーが可視化された現れであり、性別移行が流行りだとかそういうことではない」とコメントを出しています。

DVでも児童虐待でも、問題が認知されることによって発見件数が伸びることはよくある現象です。日本の児童虐待件数も30年連続で上昇していますが、これは日本の親がより暴力をふるうようになっていることを示しているわけではありません。トランスジェンダー についても同様に考えるのが合理的でしょう。

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。