FAQ|トランスジェンダーと法律編

トランスジェンダーに対するよくある質問に答えてみました

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Q29   性同一性障害特例法とはどのような法律ですか

性同一性障害特例法とは、正式名称を「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」といい、2003年7月10日に成立した日本の法律です。2023年10月現在では、戸籍の性別を変更する際の要件について次のように定められています。

一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

また前提として、的確な診断を行うことのできる二人以上の医師による性同一性障害の診断が必要です。

Q30 性同一性障害特例法の改正を求める声がなぜあるのでしょうか

日本の性同一性障害特例法は他国に比べても要件が厳しく、見直しが必要であるとの指摘があります。たとえば性別適合手術を受けることが要件の一つになっていますが、すでに以前の性別とは異なっている外観や生活実態となっているにも関わらず、戸籍の性別が以前のままである当事者は少なくありません。法律上の性別と生活実態がずれていることで身分証を出すたびに強制的なカミングアウトとなっており、不利益を生じています。また就職の際、家を借りる際などにも強制的にカミングアウトせざるをえず、そのような不都合から逃れるために本来そこまで希望していなかった手術を選択する当事者が出てきているなどの問題が起きています。

さらに、現状では未成年の子どもがいると法的な性別変更ができないことになっていますが、子どもの有無によって法的な性別変更の制限を行っているのは世界で日本だけです。

なお、性同一性障害の診断をもつトランスジェンダーの半数以上が戸籍の性別変更に至ってない現状があります。

Q31 諸外国では性別変更の要件をどう定めていますか

法的な性別変更の要件は国や地域によって異なります。日本では性別適合手術を受けることが本書の執筆時点で要件の一つとなっていますが、欧州の人権団体の調べによれば、欧州49カ国のうち手術要件がない国は28カ国にのぼります。

Q30でも触れたように、手術要件の存在はトランスジェンダーの人たちに、本来その人が必要としている以上に手術を受けることを要請する側面があることから国内外で問題視されています。世界保健機関等の国連諸機関は,2014年 5月に「強制・強要された、または不本意な断種の廃絶を求める共同声明」を発表し、この中でトランスジェンダーが「出生証明書および他の法的文書における性別記載を望む性に変更するために,断種を含む,様々な法的・医学的要件を満たさなければならないこと」を人権侵害の例として挙げ、「この手術要件は,身体の完全性・自己決定・人間の尊厳の尊重に反するものであり,トランスジェンダーの人々に対する差別を引き起こし、また永続させるものである」としています(日本でもGID学会がこの声明を支持する文書を発表しています)。手術要件の見直しは、国際的な流れとなりつつあります。

手術要件のない国での要件はさまざまです。医師の診断が必要であったり、ホルモン療法を一定期間受けていることが要件だったりと医療に関する制約を含む国もあります。医療的なプロセスによらず、本人の自己申告のみに基づいた行政上の手続きによって法的な性別変更ができる国もあります(セルフIDと呼ばれます)。このような法制度はアルゼンチンで2012年に誕生し、デンマーク、スウェーデン、アイルランド、スペインなどで導入されています。セルフIDの場合も、虚偽の申告に禁錮刑が科されたり、移行先の性別で一定期間生活していることが要件となっている場合があります。日本ではときおり手術要件がないこと=セルフIDと誤解されていることがありますが、要件の実態はさまざまです。

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